紙とExcelの限界を超えて——文書・教育・逸脱を一元管理、「ここを見れば分かる」体制へ

〜サルに特化した非臨床CROが、契約から約2ヶ月で全社運用を実現できた理由〜

シミックファーマサイエンス株式会社 非臨床事業部 シニアグループリーダー岡本 賢 氏信頼性保証部 グループリーダー鈴木 彩 氏
紙とExcelの限界を超えて——文書・教育・逸脱を一元管理、「ここを見れば分かる」体制へ

シミックファーマサイエンス株式会社 浜松ラボラトリー(旧・株式会社浜松ファーマリサーチ)は、カニクイザルに特化した薬効薬理試験を受託する非臨床CROである。同拠点では、SOPは紙とPDF、教育記録はExcelへの手入力という運用を従来行っていたが、社員数の急増により管理負荷が限界に達していた。版の差し替え漏れ、承認の滞り、分散する文書管理——品質保証の現場に共通する課題が顕在化していた。同じ悩みを持つ品質保証・信頼性保証の担当者は少なくないはずだ。

こうした状況を打開するため、同社はQMSmartを導入し、SOP・教育・技術認定・逸脱の管理を一元化。経営統合という大きな転換期を目前に、契約から約1ヶ月で初期運用を開始し、約2ヶ月で全社員の利用にこぎつけた。

導入を主導した岡本氏と、QAの立場で運用を支える鈴木彩氏に、紙運用の限界から選定の決め手、導入後の変化までを伺った。

サルに特化した非臨床CRO——統合を経て社員数は500人超に

──まず、事業内容とお二人の役割について教えてください。

岡本:当社はもともと浜松ファーマリサーチという社名で、製薬会社や大学から動物実験を受託してきた会社です。現在はカニクイザルに特化した薬効薬理試験のCROとして、サルでこそ意味のあるモデルの開発から試験の受託までを行っています。かなり尖った事業内容だと思います。2026年4月にシミックファーマサイエンス株式会社と統合して、非臨床から臨床まで事業の幅が広がり、さらなる拡大を目指しているところです。統合前は受託試験部の部長として、現在はシニアグループリーダーとして、浜松拠点全体の試験の管理を担当しています。

鈴木:私は信頼性保証部でQAの業務を担当しています。2026年4月からグループリーダーになりましたが、現場を中心に幅広く関わっています。

──統合によって、組織や業務に変化はありましたか。

岡本:大きく変わりました。統合前は30人ほどの所帯でしたが、社員数は500人を超える規模になり、会社全体のシステムも大きく変わりました。一方で、現場の仕事そのものは変わっていません。サルに特化した試験を引き続き行っていますし、統合前に導入したQMSmartも、統合後そのまま問題なく使い続けています。

紙とExcelの限界——版の差し替え漏れ、署名待ち3日、散らばるフォルダー

──QMSmart導入前は、SOPや教育記録をどのように管理されていたのでしょうか。

岡本:SOPはPDF化してクラウドストレージ上で閲覧しつつ、現場には紙媒体を置く運用でした。教育記録はほぼExcelへの手入力です。20人ほどの規模のころは私一人で管理できていたのですが、統合前に社員が1.5倍から2倍近くに増え、さすがに限界を迎えました。それから、文書管理システムや教育管理システムの導入を検討し始めました。

──紙の運用では、具体的にどのような場面に限界を感じていましたか。

鈴木:SOPや教育訓練の記録は長期保管が基本になりますが、当社は施設が狭く、保管庫の容量が厳しいという事情がありました。電子化できるものは紙を減らしたい。それに、紙は最新版への差し替えで漏れが起きやすく、お客様にSOPを提示する際に古い版が混ざるというリスクもありました人手でカバーするにも限界があり、運用として持続できないと感じていました。

岡本:署名のスピードも課題でした。在宅勤務という働き方もあるなかで、署名者が出社するまで3日待つようなことがあり、スピード感を求められる書類では不便でした。家からでも署名できる電子化は、実現したいポイントでしたね。クラウドストレージでの保管も、紙を一度スキャンする手間に加えて、各自が思い思いにフォルダーを作るので、どこに何があるか分からなくなっていく。誰でも触れる場所なので、誤って消えてしまうこともありました。文書管理システムなら権限の付与で守れますし、「ここを見れば分かる」状態にしたかったんです。

鈴木:内部監査でも、「この文書は誰が承認したものか」という指摘を受けたことがあります。誰がいつ最終承認したか分かる運用にすべきというアドバイスでしたが、紙やPDFの保管だけでは難しい部分でした。

決め手は価格と自由度、そして「ここなら変えてくれる」と思えたサポート

──システム化を本格的に検討し始めた、直接のきっかけは何だったのでしょうか。

岡本:一番大きいのは、やはり人が増えたことです。20人規模なら一人が頑張れば何とかなるレベルでしたが、短期間で1.5倍、2倍近くに増えてフォローしきれなくなりました。正直に言えば、管理していた自分が楽になりたかったというのが大きいです。困っていることは社長にも伝えていたので、社長がいろいろ調べてくれて「QMSmartというものもあるよ」と教えてもらい、お声がけしたのが直接の流れです。

──他の製品とも比較されたそうですが、QMSmartはどのような点が良かったのでしょうか。

岡本:一番は価格です。先行して検討していた海外製のシステムは数千万円規模の見積りで、文字どおり桁が違いました。当時の当社の規模には機能面でも過大で、検討が止まってしまっていたんです。その点QMSmartは、悪い意味ではなくコンパクトで、必要な機能に絞られており、当社に合っていると感じました。

──最終的な決め手は、費用面のほかにどんなところでしたか。

岡本:自由度の高さです。当社の使い方は少しイレギュラーで、ワークスペースを会社ごとや部門ごとではなく、資料ごとに分けたりしています。そうした柔軟な使い方ができたこと。それから、相談するとすぐ返事がもらえて、「ここが使いづらい」と伝えるとすぐバージョンアップしてくれる、きめ細やかさを感じました。どのシステムでも、導入後に困る場面は絶対に出てきます。「ここなら良いように変えてくれるんじゃないか」と思えたことが大きかったですね。

鈴木:対応が本当に丁寧なんです。システムを検討していると、相手のレスポンスが悪い時点で「困ったときに助けてもらえないのでは」と感じてしまいますが、その点で信頼感を持って導入を決められました。

全員を巻き込んだトライアル——契約から約1ヶ月で運用開始

──社内での提案や承認は、スムーズに進んだのでしょうか。

鈴木:社長が導入に前向きだったので、その点はすんなりでした。ただ、導入を決めても、結局使うのは全員です。こういうものは一人が引っ張るだけでは周りがついてきません。当社は役割が枝分かれしていて、SOPはSOP委員会、教育は岡本をはじめとする一部のメンバー、逸脱の管理はQAと担当が分かれています。だからこそ、私や岡本だけでトライアルするのではなく、関係者を巻き込んで、実際の作業をイメージした流れでみんなに動いてもらい、「いけそうだ」という感触をつかんでいきました。実際に業務をやっている人が触ってみないと、どういう流れで運用すべきかは想像できません。関係者を巻き込んだことが、一番の工夫だったと思います。トライアル中も定期的にミーティングで状況を確認していたので、本格導入時点で操作に慣れている人が増えていたのも良かったですね。

──契約から本番運用までは、どれくらいの期間だったのでしょうか。

岡本:まず運用のための準備や設定に1ヶ月。全員が使い始めたのは、その約1ヶ月後です。トータル2〜3ヶ月で立ち上げた計算になります。本来、システム導入は予算立てをして1年後、2年後という話になりがちですが、社長の後押しでスムーズに進めることができました。

──文書登録やマスター設定など、導入準備で工夫されたことはありますか。

岡本:一番時間をかけたのは「大枠」の設計です。管理したい文書にはSOP、教育、当社独自の技術認定があり、さらに逸脱管理系という、本来のQMSとは違う部分での利用も考えていました。いかに登録しやすく、その後の教育に活かしやすい構成にするかを考え抜きましたね。分からないことがあっても、定期的なフォローアップやメールのやり取りですぐに聞けましたし、バージョンアップの際には「当社ならこう当てはめられる」というヒントももらえて、うまく使えるようになったと思います。

文書・教育・技術認定・逸脱を一元管理——Excel入力がなくなり、精度も向上

──主に、どのような業務でQMSmartを使われていますか。

岡本:主に4つです。SOPの管理、教育資料・教育記録の管理、技術認定、そして逸脱です。技術認定については、紙での管理が煩雑で、誰が承認を得ているのかを確認しづらい状態でしたが、QMSmartで一括して管理できるようになりました。逸脱も、以前は紙で起票し、承認だけ別のシステムで署名をもらい、それをPDF化してまた紙で保管するなど複数のシステムにまたがっていたものが、QMSmartで一元管理できるようになりました。

──教育訓練では、オンラインテストやAIによるテスト生成も活用されているそうですね。

岡本:全問正解しないと修了にならない運用を、紙のころから変えずにオンラインへ移行しました。アラートも出してくれるので、期限内にみんなが受講してくれるようになり、紙やWordで書いて提出してもらっていたころより確実に良くなったと感じています。受ける側のストレスも少なかったと思います。AIのテスト生成は、冊子をスキャンしてPDF化し、それをもとに問題を作ってもらいました。文字をかなりきれいに認識してくれるので、問題作成自体はとてもスムーズで、すごく助かりました。

──工数の面では、どのような変化がありましたか。

岡本:教育管理では、それまでExcelに手入力していた受講記録の更新作業が不要になりました。手入力作業が丸ごとなくなった上、手入力にどうしても紛れ込んでいたミスもなくなり、負荷の軽減とデータ精度の向上を同時に実感しています。

鈴木:SOPは段階的に移行を進めていますが「最新版はQMSmartで見る」「現場にはiPadを置いてそれを見る」という形にでき、SOP委員会の管理はずっと楽になっています。QAとしても、施設調査の際に「現場のSOPが古いのではないか」と確認して回る負荷が解消されます。逸脱も、QMSmartのイベント管理で有効性の確認まで含めて「きちんと確認した」ことを残せて、教育や文書とすべて一元で紐づけられるようになったので、内部監査やお客様が来られたときに「ここを見れば管理状況が分かる」と示せるのは大きいですね。

──当初の想定とは違うところで、役立っている機能や使い方はありますか。

岡本:学会や出張の報告書も登録してもらっています。登録した報告書を本人に教育として返し、学会参加や講習受講を教育の実績として残す使い方です。報告書が1ヶ所に集まるので、ほかの人もアクセスしやすくなりました。以前は本人以外が見られない場所に保存されていることもあったので、共通の文書として整理されたのは良かったですね。

鈴木:任命書や委員会の議事録も同じです。以前は各委員会に任せきりで全体を把握する場所がなく、任命書も紙で保管したきり確認しきれていない部分がありました。全部文書として登録して一覧できるようになったのは、思った以上に役立っています。「ここを見ればある」という状態が理想で、それがだいぶできてきました。文書ごとの管理番号で件数の把握や整理がしやすいですし、アップデートでフォルダーの移動もできるようになったので、とりあえず登録しておいて後から動かせる。普段使いのクラウドストレージと同じ感覚で文書を保管できるのは、とても馴染みやすいです。

同じ課題を持つCROへ

──最後に、同じように紙の運用に課題を感じているCROや非臨床試験機関の方々へメッセージをお願いします。

鈴木:QMSmartはシンプルで、アップデートにより柔軟性も高まっています。当社のようなCROは、試験のデザインによって帳票や文書が変わることも多いのですが、そうした使い方にも合わせやすいと思います。価格の面でも導入しやすく、サポート対応も迅速なため、紙の運用に課題を感じているCROや非臨床試験機関にとって、有効な選択肢の一つになると思います

(取材・執筆:株式会社Berry)

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